コース: AI 入門

知性を定義する

コース: AI 入門

知性を定義する

人間の強みは、 多様な知性を発揮できることです。 外国語を簡単に習得できる人もいれば、 理工学分野に長けた人もいます。 芸術家の多くは数学が苦手ですが、 天才的な数学者には絵が 描けない人が多くいます。 このどれもがすぐれた知性であり、 人の知性を測る基準は1つではないのです。 このことが、コンピューターの 知的能力についての議論を 難しくしています。 コンピューターが特に得意な領域では、 多くのタスクで人間を凌駕します。 1956 年に初めて AI のワークショップが 開かれてからわずか数年後、 コンピューターシステムが ボードゲームのチェッカーで 人間に勝ち始めました。 でも、その力を知能と呼ぶ人は 誰もいませんでした。 当時の性能でも、一定のルールや パターンの中なら高い成果が出せたのは パターンのマッチングが 非常に得意だからです。 コンピューターの得意分野なら、 知能と呼んでも違和感がないほどの力を 発揮します。 チェスの対局では、何十年も前から 人間が敗れ続けています。 囲碁でも、Google 傘下の DeepMind のシステムが プロ棋士に勝っています。 囲碁は、宇宙に存在する原子の総数を 上回る対局のパターンがあると 言われるほど複雑なゲームです。 ただ、機械がどれだけ強くても、 決まったルールに沿ってパターンを 見つける能力を発揮しているだけで、 対局の意味までは理解できません。 こんなに強いのに、対局する意味が わからないとはどういうことでしょう。 コンピューターサイエンスの分野で、 AI は「人間の知性とも 解釈できるような行動を示すシステム」 と定義されていますが、 この短い定義ひとつ取っても 答えはさまざまで、 それが人によって チェスのシステムだったり、 スマートスピーカーだったりします。 2022 年には、 Google で開発されたチャットボットに 魂が宿ったと主張するエンジニアが 解雇されました。 このチャットボットは、 スイッチを切られることは 死と同じだと答えていました。 一方、それが言語モデルと パターン認識の働きに過ぎないと 考えるエンジニアは、 このチャットボットが設計意図に沿って 人間らしい言葉を出力しているだけだと 述べています。 本当に知性はあるのか。 知性を装うようにできているのか。 その2つに 違いはあるのか。 重要なのは、コンピューターの知性が 人間の知性とは成り立ちから 大きく異なることです。 一定のルールやデータの範囲内では、 常に AI が力を発揮するでしょう。 AI システムのメリットを 最初に享受できるのも、 仕事が定型化している企業です。 これまでにも、ネット検索サービスや オンラインショップなどが AI を活用して成果を上げています。 言うまでもなく、ルールの適用と パターン認識が重要な分野です。 AI システムがボードゲームや ビデオゲームに強いのも、 同じ理由からです。 自社業務への AI 活用を考えるなら、 コンピューターの得意分野から 考えることが近道です。 大量のパターン認識、ルール、確率を 使用する業務はあるでしょうか。 そんなタスクが、AI 導入の 入口としては最適なのです。

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