コース: AI 入門

自然言語処理とは

コース: AI 入門

自然言語処理とは

AI の可能性は、 コミュニケーションの領域でも 広く注目されています。 人間同士のコミュニケーションと比べて、 機械から機械へのコミュニケーションは、 はるかに正確です。 コンピューターネットワークは、 情報の正確なコピーを 光の速さで伝送できますが、 人間はいつもお互いの理解不足や 伝達ミスに悩んでいます。 思いの1割でも相手に伝わるなら、 もはやコミュニケーションの達人と 呼んでもいいでしょう。 ですから、こうした人間の欠点を 補う技術には、高い需要があります。 この領域で期待されている技術の1つが、 AI による自然言語処理です。 人間がほかの人に話しかけるような 自然な言葉で システムを操作したり 利用したりすることを可能にします。 私たちが日々利用している Google などの検索エンジンには、 知りたいことを入力する 小さい窓があります。 例えば、「ベルギーワッフルのレシピ」と 入力すると、 検索エンジンがそれに合う 上位のページを一覧表示してくれます。 これを、文字ではなく スマートスピーカーなどから自然言語で 入力することも可能になりました。 「あの大きくてふわふわのワッフルが 作れるいいレシピを出してもらえますか」 というように、 人間は、名称の代わりに特徴を 挙げて伝えることがよくあります。 この例では、大きい、ふわふわの、 いい、という情報です。 その理解に使われるのが、 自然言語処理システムです。 いい、という特徴が相対的なものであり、 人気の高いレシピのことだと解釈したり、 大きいふわふわのワッフルとは 何かを特定したりします。 最新の自然言語処理システムは、 機械学習と人工ニューラルネットワークの 技術を使って、 人間の膨大な会話データから パターンを割り出しています。 大きい、ふわふわの、といった形容が 出てくる会話のパターンから、 ベルギーワッフルという名称を 突き止めます。 AI に取り組む企業が、無料メールなどの サービスを提供しているのも、 人工ニューラルネットワークの パターン学習に役立てるためなのです。 自然言語処理では、 個々の単語の意味だけでなく、 文脈全体が示している意味の理解も 重要です。 何年か前、Google で 「愛とは何か」を検索することが 流行しました。 有史以来、人間は愛について さまざまな記録や作品を 生み出しているので、 このテーマに関するデータは膨大です。 ブームの当時に Google が 出していた検索結果は、 求愛行動から人とのつながりを意識する 重要性まで、愛という言葉が 使われているページを 雑多に並べるだけでした。 データベースの中から、 キーワードに一致する検索結果を 取り出して羅列するだけです。 それでは、人間が納得できるような 生きた自然な答えとはいえません。 自然言語処理は、 機械にもっと広い見地からの 理解力を与えてくれます。 「愛とは何か」と入力する人は、 生物学的な知識よりも、 愛という感情をめぐる考察や 名言のようなものを求めています。 現在 Google が表示する検索結果は、 自然言語処理を使うことで、 かなりそれに応えるものとなっています。 自然言語処理の可能性は、 こうした実用的あるいは非実用的な 検索への応答だけにとどまりません。 出会い、共感し、理解し合うという 人間性の根幹を担うのが コミュニケーションです。 自然な言語でやり取りできない限り、 AI に知能が認められることは ないでしょう。

目次