コース: AI 入門

一般問題解決器とは

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一般問題解決器とは

1957 年、ニューウェルとサイモンにより、 一般問題解決器という プログラムが作られました。 設計の土台になったのは、 2人が物理記号システム仮説と 呼ぶ考え方で、 記号を介した人と外界の接触に 着目しています。 止まれの標識を目にすると車を止め、 A の文字を見るとその音が伝わります。 サンドイッチなら食事とわかります。 このように記号同士を結びつける プログラムができれば、 それは知能だと彼らは言ったのです。 しかしこれには納得しない人々もいました。 止まれの標識で停止したり、 言語に応答したりする プログラムができても、それだけで システムを知能とは呼べないとしたのです。 1980 年、哲学者ジョン・サールが、 知性に見えるものは パターン認識にすぎないとの見解を、 中国語の部屋という比喩を使って 説明しました。 その部屋には窓がなく、 ドアについている手紙の差入口だけが 外界との唯一の コミュニケーション手段です。 部屋のデスクには分厚い手順書があり、 部屋中に貼られた付箋紙には 中国語の文字が書かれています。 手順書には、「漢字が このように並んでいたら、 このように漢字を並べて返すこと」 というように、入ってくる手紙の 内容に応じた返答の仕方が書かれています。 さて、この部屋の外から、 中国語を話す人が何かを手紙に書いて、 ドアの差入口に入れてきたとします。 そこに書かれた漢字の並びを 手順書で調べれば、 書かれたとおりに漢字の付箋を 並べることはできるでしょう。 ただ、その中国語が何を意味しているか、 当人にはわかりません。 単に手順書を参照しながら、 記号としての漢字を指示どおりに 並べているだけです。 ドアの向こうの人物には、 部屋にいる人と会話ができているように 思えるかもしれません。 もしかすると、部屋にいるのが 同じ中国語話者に思えるかもしれません。 しかし実際には、中国語どころか その交信の意味すら全くわからない人が 返信しているのであり、 それは知性とはほど遠い、 とサールは言ったのです。 同様の実験は スマートフォンを使ってもできます。 Siri(シリ)や Cortana(コルタナ)に、 今の気分を質問してみましょう。 「はい、元気です」と返事があっても、 Siri たちが本当に元気を自覚して、 それを教えてくれているわけでは ありません。 質問の意味さえ理解しないまま、 中国語の部屋と同じように、 問いに応じてプログラミングされた 返答を出力しているだけなのです。 記号対応の能力は本物の知能ではなく、 コンピューターは、 ただ意味もわからず手順書のとおり パターンを返す部屋の主と同じだと、 サールは主張しました。 結局、物理記号システムを基盤とした AI 研究は四半世紀も続きましたが、 最後は、パターン別のプログラミングが 限界に達しました。 記号同士を組み合わせていけば、 いずれは組み合わせ爆発が起こって どんなに手順書を厚くしても 足りなくなります。 プログラミングできる 応答に限界があるのです。 記号システムだけでは 知能にならないとする意見が、 サールを含めて多数派でした。

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